金属資源ビジネス①概論編
どうも、ドチです🐱
シリーズで解説する、総合商社の手がける代表的なビジネス紹介記事です。
今回は、第二回「金属資源ビジネス」の①概論編について説明します(ちょっと記事長くなりましたが、これを見れば商社の資源投資ビジネスはざっくり理解出来るはずです)✨
商社の資源投資って、ものすごく儲かっている案件もあれば、巨額の減損(*)を出す案件もあったりで、ハイリスクハイリターンなイメージがあるなぁ・・・。 (*)減損 = 減損損失。簡潔に言えば、ある出来事(長期にわたるプラントの故障等)や状況変化(プロジェクト当初に想定した製品市況からの大幅な下落等)により、資産や事業の価値を、会計ルールに基づき、下げること➡️減産を行なう会計期間内の純利益に多大な影響を及ぼす。
確かに、まさに先日、住友商事が発表した、マダガスカルでのニッケル事業の減損(約550億円)では、それが主な理由で20年4-6月期の四半期決算が赤字転落という事態を引き起こしましたね😱⬇️
住友商事は20日、アフリカ・マダガスカルのニッケル鉱山開発を巡り2020年4~6月期に約550億円の減損損失を計上する見込みと発表した。新型コロナウイルスの感染が広がって操業停止が長引き、ニッケル相場も下落した。住商はこれまで同鉱山に数千億円を投融資しており、今回の損失によって残高は約9億ドル(960億円)程度となる見通し。
2020年7月20日 日経新聞より
他方で、以下の通り、三菱商事や三井物産の2019年度の決算では、他の分野に圧倒して金属資源関連の利益が大きく、会社の収益柱となっていることが分かります💰
➡️三井物産は、全体の純利益の内の約47%(=1,833億円)が金属資源関連❗️
これらを見ればハイリスクハイリターンと言えそうですよね。
単純に考えて、掘って当たれば儲かるのでは?と思いますが、なぜ商社間で収益の差が生まれるのか、そもそも資源投資ビジネスとは何なのか、その中で商社ってどういう役割なのか?等の疑問に応えるべく、説明していきます。
早速以下の通り見ていきましょう🚀
目次
- 資源投資ビジネスとは?
- 商社の役割は?
- 投資決定の前後では具体的に何をするの?
- オペレーターを務める商社もある!
1. 資源投資ビジネスとは?
そもそも資源投資ビジネスとは何でしょうか?
簡単に言えば、「将来にわたって需要のある資源の権益を押さえておこう!」というものですね💎権益を押さえるだけでなく、それを販売出来て初めて収益化出来る訳ですので、良質なプロジェクトにする為には、ざっくり言って、
- 質の良い鉱石を見つけられること
- しっかりと掘れること
- 掘った鉱石を生産現場から港まで運べること
- 安定的に買ってくれる需要家を押さえていること
- そもそも掘り当てられるまでの資金があること
等が重要になってきますね。
ただ、第一回の「石油ビジネス」でも説明しましたが、基本的には商社は探鉱や開発、操業等の技術的な部分への知見・経験が無くor浅く、それらをしっかりやってくれるオペレーター企業というパートナーを必要とします。したがい、オペレーター企業(海外で言えば🇬🇧🇦🇺BHPビリトンや🇬🇧🇦🇺リオティント、国内だと🇯🇵JX金属や住友金属鉱山等)がプロジェクトの大株主(50%以上の出資者)となり、ほとんどの商社は少数株主としての参画となります(20%以下とか)💹。
2. 少数株主としての商社の役割は?
前述の1-5の内、メインの1-2はやはりオペレーター企業が支配権を持って進めます。したがい、1-2で商社がやれることは限定的であり、強いて言えば、世界中に根ざしたネットワークを活かした重機🚜等、掘削に必要なツールの仕入れだったりでしょうか。
商社に求められる主な役割は、一般的にはやはり4-5となります。資源開発プロジェクトは基本、長期にわたるものであり、長く購入を保証してくれる顧客無しには成り立ちません🙅♀️したがい、マーケティングや顧客との長期売買契約交渉をプロジェクトの窓口として行なったりします。
また、大規模な開発には数千億円単位の💰が必要になります。もし、対象となる鉱脈の鉱石の品質が良く、埋蔵量も確実に沢山あり、読み通りにその金属の市況価格が未来永劫上がっていくという話であれば、もちろん、オペレーター企業は100%出資して自分たちだけで利益を総取りすれば良い話ですが、そんなのは神のみぞ知るものであり、リスク分散を図りたい訳です。そこで、資金力もあり(=銀行🏦からも低金利で融資を取れ)、かつ過去から資源投資に知見がある商社に一部出資者になってもらおう、というプロジェクトがほとんどなのです。
ただし、上記はあくまで一般的な「傾向」であり、各商社は皆、プロジェクトの業績を上げることにいかに貢献出来るかを四六時中必死で考え、パートナーのオペレーター企業に「将来、また優良プロジェクトがあれば、一緒にやりたいな」等と思ってもらえる様に「何でも屋」になって頑張ります🔥例えば、
「生産現場から港まで運ぶ貨物列車、ウチの鉄道使って効率高めません⁉️🚆」
とか、
「探鉱や操業にAIを活用してみません❓🇺🇸米西海岸で取引開始したXX社という会社がありまして」
とか、
「地元住民よりプロジェクトの理解を得る為に、開発作業開始前に交流会を開きません❓🇯🇵文化を紹介したら盛り上がるかも⁉️👘」 ※地域住民との関係は超大事🤝住民の声一つでプロジェクトが操業停止に追い込まれるなんて事態におちいることもあったり・・。
とかとか。とりあえず、何でも良いから何か価値を高めようと提案し続けることが重要です。
3. 投資決定の前後では具体的に何をするの?
ある資源投資プロジェクトに興味を持ち、参画する方向でアクションする場合、①案件評価(F/S, DD)→②案件形成(交渉, 社内稟議)→③開発→④操業という流れで進んでいきます。各々具体的に見ていきましょう👁
①案件評価
以下の様な事項を徹底的に事前調査(ほんの一部ですが・・)❗️
- 各プロジェクト参加企業(=パートナー)の役割は?出資比率は?
- オペレーター企業の技術は大丈夫?十分な経験/勝算ある?
- 各パートナーの真意は?何が起きたら撤退か、意識は合わせてる?
- プロジェクトの国の情勢は?鉱山接収されない?
- 政治情勢や治安だけでなく、現場労働者の勤勉さは?国民性は?
- プロジェクトに必要な資機材の調達ルートは複数ある?安定してる?
②案件形成
①で調査した内容を踏まえ参画の意向を固めたら、以下の様なアクションを実施(一部です)❗️
- パートナー企業間協議(プロジェクトの情報開示の頻度・内容等管理体制の事前取決め)※オペレーターは基本、必要最低限の情報しかくれない
- 顧客との長期売買契約交渉⚡️📄⚡️
- 社内稟議🔥
- 現地での投資会社(100%子会社)設立🏢
- プロジェクトのジョイントベンチャー設立🏢
- 銀行からの融資実行🏦
③開発
基本、オペレーター企業が中心となって進めるフェーズではあるものの、少数株主の立場からもキチンと進捗状況を注視し、以下の様な提言を行なっていきます👄
- 計画変更してでも、Keyとなる操業設備にはお金かけて!(スケジュール通りに操業始まらないと大幅なコスト増になるが、、操業開始後の生産量が50%という状況が10年も続いちゃ死ぬ💦)
- 安全第一⛑として、現場労働者のモチベーション維持、地元コミュニティへの密な進捗説明もしっかりやって!
- 操業開始前の試運転期間中は、設備会社の人にも長期間滞在してもらって立ち合わせて!
④操業
ここも基本、オペレーター企業が中心で進めますが、操業状況は販売数量に直結したりするので、オペレーターと密に情報共有出来る関係性を作っておかなければならないです🤝 その他、
- 操業上のキーパーソンは辞めずに続けてくれるか?
- 頻度高く壊れる設備/部品は在庫数量を変えるか?
- 生産チームとメンテナンスチームの連携は大丈夫か?
- 商品市況が下がり、販売価格も落ち込んできた時はどこをコストカット出来るか?
等々です。
4. オペレーターを務める商社もある!
これまでご説明した通り、プロジェクトに出資する各株主の中で、基本的にはオペレーター企業の負荷が断トツ大きいです(=その分リターンも大きい✨💰✨)。
さて、商社は基本、少数株主の脇役と申し上げてきましたが、商社がオペレーターシップを取り推進するプロジェクトもあります。
住友商事のボリビア亜鉛・鉛・銀鉱山案件👇
https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/business/case/group/232
➡️住友商事が100%出資して進める案件です。こうしてオペレーターシップを取り毎日四苦八苦することで運営ノウハウを溜め、リターンを増やし飛躍を狙う、という戦略もありますね🔥
他方、三井・三菱の様に、全ての金属資源案件でマイノリティ出資を貫き、信頼出来るオペレーターと組むことで着実に利益を重ねる、という形が商社による資源投資ビジネスの正解とも言えるのかもしれませんが(あくまで「現状は」ですが・・)。
まあ、一サラリーマンの視点で言えば、、オペレーターに挑戦する方がドラマチックな人生を送れると思いますが🌇
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いかがでしたでしょうか❓
次回は、上記説明した各フェーズの業務に携わる社員が、具体的にどういうスケジュールで仕事しているのかにフォーカスしてお話します。
何か質問がある方はお問い合わせフォームor Twitter🐦よりご連絡を❗️
最後に。
コロナ😷はもちろん、熱中症にも気を付けて!!🐱