【総合商社】伊藤忠・丸紅が出資するサハリン1プロジェクトについて
どうも、ドチです🐱
先日のサハリン2に関するブログ記事が、これまでの当ブログ記事の投稿初日のアクセス数が歴代No.1になりました👏🙇♂️
その記事はこちら👇
ロシア政府による接収のニュース発表当日の記事だったので、ありがたいことに伸びたんですね。
・・で、サハリン2は三井物産・三菱商事の出資先でしたけど、
その後、やはり接収の対象となるニュースが出てきた、伊藤忠商事・丸紅がサハリン1プロジェクトについて、
👱♂️「ぜひサハリン1についても記事を書いて欲しい」
と、ありがたいことにリクエストを頂いので、休日の時間がある中で書いてみました。
やはり本記事は、伊藤忠・丸紅の株を持つ投資家さんの方が関心が高いとは思いますが、
両社を志望するような学生さんにとっても知っておいて損はないと思います✨
なるべくわかりやすく解説しますね。
それでは早速見ていきましょう🚀(記事の長さ:少し長め🙇♂️💦(4-5分程度))
目次:
- プロジェクトの概要と現状にいたるまでの背景
- 純利益へのインパクト
- 株価について
1. プロジェクトの概要と現状にいたるまでの背景
まずはこのプロジェクトの概要について、か〜んたんに解説します。
このプロジェクトは、サハリン2同様、ロシア領のサハリン島(北海道の北)の北東部沖の天然ガス・石油開発プロジェクトです。
サハリン2と比較した時に1番違う点は、日本政府の関与が強い、というところです。
それがどういうことか説明すべく、まず、このプロジェクトの出資者を紹介します。
- エクソンモービル(米):30%
- ロスネフチ(ロシア):20%
- ONGC(インド):20%
- サハリン石油ガス開発(SODECO、日本):30%
という出資比率になってまして、この最後のSODECOの出資者が、
- 日本政府(経済産業大臣、以下経産相):50%
- 伊藤忠商事(正確には伊藤忠グループ):約16%
- 石油資源開発(JAPEX):約15%
- 丸紅:約12%
- INPEX:約6%
となってるんですね〜。
上記の何に注目をしてほしいかというと、経産相が50%保有している、という点ですね。
もっと詳しくいえば、JAPEXとINPEXの筆頭株主はどちらも経産相であり、各々約35%/19%保有してるんです。
つまり、SODECO自体がほぼ日本政府の会社であり、そこに大手商社の2社がちょい乗りしてるって感じなんです🖐
対して、サハリン2は三井・三菱のみであり、政府の関与という意味では、プロジェクトへ国際協力銀行(JBIC)の融資が付いてる、という程度に過ぎないんですね。
そのあたりがまずサハリン2との違いです。
また、どちらもガス・原油の開発なのですが、では採掘されたガス・原油がどこの国・地域にどれだけの量流れてるのかを見てみましょう👁
サハリン2(製品=LNG(天然ガス)+原油)の方は、
- LNG:島の最南端まで約800キロのパイプラインを通し天然ガスを運び、そこでLNGにして、その60%(約700万トン/年)を日本向けに販売(日本のLNG輸入量の約9%)
- 原油:全生産量の20%ちょいの約1,000万バレルを日本向けに販売(日本の原油輸入量の約1%)
でしたが、サハリン1(製品=天然ガス+原油)は、
- 天然ガス:日本向けは供給無し。
- 原油:全生産量の11-12%ちょいの約800万バレルを日本向けに販売(日本の原油輸入量の約1%弱)
という比率なんです。
👦「え!?なんで日本政府が2より関与するプロジェクトの製品が、日本に入ってきてないんですか!?」
調べてみると、う〜ん、実はそうみたいなんです。
その背景には、これまで主要株主で、サハリン1のオペレーター(*)だったエクソンモービルの意向と、(プロジェクトに出資はしてないけど、ロシアのエネルギー大手の)ガスプロム社の関係があったんですね。
(*)オペレーター:実際のガス・原油の採掘・生産作業を実施・管理する当事者の企業
すごく簡単に経緯を説明すると、
- 元々は、天然ガスの輸出先は日本向けを想定し、パイプラインを敷いて運ぶ計画を発表してた(2001年)
- ところが、主要顧客となるハズだった東京電力を始めとする日本の電力会社が買いに動かなかった
- そして、今度はオペレーターのエクソンが、中国向けにパイプラインで供給すること発表(2006年)
- ところがところが、今度は、ロシアからの天然ガスの輸出の独占権を持つガスプロムがイチャモンつけてきた
- それを見てたSODECOは、やはり何とか日本にガスを持ってきたいという思いで、ガスプロムが別途主導する極東のLNGプロジェクトに協力する姿勢を見せていた
- そんな中、2011年、東日本大震災が起き、原発を停止。日本はより天然ガスの消費を増やさなければいけない、という状況におちいった・・。
・・って感じなんです。
ただ、どうやら現在に至るまでサハリン1の天然ガスが日本には届いていない様子・・。
なぜでしょうね。
ということなので、今、日本で話題の「エネルギー安全保障」の観点で言えば、結論、確保すべき資源量の観点ではサハリン2の方が比較にならないほど重要なプロジェクトだとわかりますね☝️
また、2月24日の、ロシアによるウクライナ侵攻後の経緯も簡単におさらいすると、
- 欧米の対ロシア制裁の流れで3月1日にエクソンが撤退方針を発表(オペレーターとして、操業停止に向けた作業を開始すると宣言)
- そして、7月7日、ロシア下院のエネルギー委員会委員長が記者会見で「(サハリン1は)ロシアの管轄下に置かれることになるだろう」と発言
となり、サハリン2同様に事実上の「接収」か?となっているって話ですね。
2. 純利益へのインパクト
さて、サハリン2の記事で、三井・三菱両社の決算へのインパクトをザックリ見ましたよね。
それとおんなじことを、伊藤忠・丸紅でしてみますかね。
細かい点は無視です🙅♀️
まず、資源で稼ぐイメージの小さい、伊藤忠・丸紅の両社のエネルギーセグメントの利益を各々見てみましょう👁
以下は伊藤忠の22年3月期のエネルギーセグメントの純利益です。
(22年3月期同社決算資料から引用、以下関連資料も全て同様)
約479億円💰
ではサハリン1プロジェクトからの利益(出資比率とその影響力から考えて、利益は全て配当でしょう)はいくらかと言うと、、
上記の資料で、まず上部の赤丸には「ロシア関連事業からの収益貢献は約150億円」と記載あり、、
また、下部の赤丸には「ロシアでの主たるビジネスは、サハリン1と日本南サハ石油」との記載がありますね☝️
さっきの画像で、日本南サハ石油の利益は41億円とありました。
つまり、サハリン1事業の利益はな〜んとなく90-100億円ってなトコなんでしょう。
さて、一方の丸紅はどうなんでしょうか?
以下は同社の22年3月期のエネルギーセグメントの純利益です。
(22年3月期同社決算資料から引用)
約377億円💰
同社は、プロジェクト別の利益などの情報が読み取れなかったので、もう超概算で、伊藤忠との出資比率の比(約16%:約12%)で算出すると、、
68-75億円
ってなトコなんでしょう。
サハリン2の記事では、同様の概算(=接収された際に毎年どの程度の利益が吹っ飛ぶの?と言う数字)が、
- 三井物産:150億円
- 三菱商事:100億円
でしたよね〜。
で!接収発表後の7月1日、両社の株価は5-6%下落してましたよね。
あれ?では伊藤忠・丸紅の株価はどうだったんでしょうか?
3. 株価について
・・・ということで、最後に両社のここ数日の株価について見てみましょう💹
冒頭で、主に投資家さん向けの記事としてますんでね😏
結論、こんな感じでした👇
①伊藤忠
②丸紅
簡単にまとめると、
- 伊藤忠:7月8日終値まで影響なし。むしろ上昇
- 丸紅:伊藤忠同様、7日終値から上昇し引けた
ですね🤔
👧「いやいや、7月1日にサハリン2の接収の可能性の話があった時に織り込み済みだったんでしょ?」
そう思って6月30日の終値(両画面中カーソルを当ててるトコ)から、両社見てみたんですが、、(特に伊藤忠は)全然影響受けてなさそうな気が・・・🤷♂️
まあ株価は大衆心理を映すものですから、、
「やっぱ、両社ともエネルギーって印象なかった」
っていうのと、
「エネルギー安全保障の件と、接収が与える利益へのインパクトの話がごっちゃになった三井・三菱の株価が過剰に反応しただけだった」
と、結論づけられる気がするんですよね🖐
と、いうことで、前回記事同様ですが、基本、この件に関しては総合商社の株はガチホでいいんじゃないでしょうか?
あ、これとは全く別の話で、昨今の景気減速感は否めないので、新規や買い増し狙う方はタイミングを注視していきましょうね〜🐱
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いかがでしたでしょうか❓
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