【総合商社】胃が痛かった想い出の商売・・・(外国間貿易編)

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どうも、ドチです🐱

今回は、実際に物流業務に携わっていた過去に直面したトラブル事例を紹介し、「胃が痛かった経験がどんなものであったか」を臨場感を持って分かりやすくお伝えしようと試みます。

最初に申し上げておくと、この記事でお伝えしたいポイントは以下の通りですね。

  • 新しい取引先と商売を始める上での難しさ(取引開始前の現場視察の重要性)
  • 契約書の文言の大切さ
  • 中長期的に深く付き合う上で相手の立場を思いやることの大切さ
👦👧「なんか難しそうですね・・・」

そんな声が聞こえてきそうですね💦 正直、基本的にやはり商売をしっかりまとめ上げるのは難しいものと言わざるを得ません。

ただ、やはりどんな仕事も慣れですので、最初はトラブルが付き物ですね!!それを如何に楽しめるかですね😄

・・まあ、今回の事例は、入社1年目の終わり頃の話でしたので、楽しむには程遠かったですが。。。

それでは早速見ていきましょう🚀(記事の長さ:長い(4-5分程度🙇‍♂️💦))

本記事では、実際の国名は伏せており、数字自体はフィクションですが、実例に基づいた実話ベースでのお話です。

目次

  1. 商売概要📄
  2. え!?数量が違う👁💦
  3. 「で?なぜウチが損する必要がある?」
  4. 長く取引する為の心構え🤝

1. 商売概要📄

冒頭で述べた通り、これは私が入社1年目の3月〜入社2年目の4月頃に担当した物流商売で起こったトラブルの話。

担当商材は、個人でなくチームでやる様な、いわゆる「大型商品」で、先輩が交渉をまとめた後、契約を実行する部分(=オペレーション。モノが売手(=サププライヤー)の積港から当社の手配する船に載せ、買手(=顧客)が待つ揚港で卸すまで)を、行なうのが当時の私の役割だった。

オペレーションを初めて担当したのは、1年目の1月。その時は、同じ商品の台湾積中国揚の案件で、特段、トラブルもなく淡々とこなすことが出来た。今回は実質2回目のオペレーションということだった。

契約の概要は以下の通り(厳密性よりも分かりやすさ重視です💦)。

商品:A
数量:約20,000トン(→20,000トンのプラスマイナス5%以内であればOK*1)
価格:買いはUSD100/トン、売りはUSD120/トン
運賃:USD17.5/トン(→つまり、USD2.5/トン x 実際の積数量(*1)が当社の利益)
売手:S社
買手:B社
積港:欧州某国(=E国)
揚港:中南米某国(=C国)
備考:船積数量の最終決定は、S社でも船会社でもない第三者機関である検量業社が行なう、と規定(*1)
(*1)普通、ちょうどきっちり20,000トンを積載することは実務上不可能である為、この様な契約条件となるのが一般的。また、実際に積み込まれた数量の検量を第三者機関に委ねるのは、売手(この場合S社)と買手(この場合当社)の間で、数量の認識のズレを生じさせない様に公平に測定する為。尚、一般的に、積み込みを完了した時点で、船上で測量が行われる。

→この最後の部分が、後々問題になることに・・。

これまで、所属する課/チームとして、顧客・B社には販売実績があったが、サプライヤー・S社とは初めての取引であった・・・

2. え!?数量が違う👁💦

船積時期が間近に迫り、私はドキドキしていた🥺

前回は台湾積→中国揚案件であり、両国とも時差が-1時間。今回は、積地が欧州で-8時間、揚地が中南米で-12時間。日本時間の夕方頃に欧州が開き、夜遅くに中南米が開くという程に時差がある。シンドイ・・・💦

それに、、現地で何か起きた場合、顔も見たことのない各々の現地支店のローカルスタッフと連携し対応しなければいけない・・。今となっては当たり前だが、1年目の当時はドキドキだった。

ついに船積の日が来た。船が予定通り積港に到着したのだ⛴

積荷役には3日間程かかった。この辺は全て想定通りで、船会社に対する滞船料(*2)の支払いも不要と判明し、船が順調に出港したところで、一安心した(ホッ😌)。

(*2)滞船料の説明は以下の記事ご参照。物流業務に携わる上での超超超基礎単語。

サプライヤーS社からの速報メールによれば、積数量は20,250トンであったとのこと。それを確認し、その日は深夜にタクシーで帰宅した🚕💨💦

事態がおかしくなったのは翌日のこと。

検量業社からの検量レポートが送られてきたのだが、なんと、、の数量が19,750トンとのこと。。血の気が引く・・・😱

🐱「!?20,250トンじゃないの??サプライヤーの第一報と数字が違う・・。なんで500トンもズレる!?」

・・これの何がマズいかお分かりだろうか??

もし、S社との最終確定数量が20,250トンであれば、

①S社への支払い=USD2,025,000(= USD100/トン x 20,250トン)
②船会社への支払い=USD345,625(= USD17.5/トン x 19,750トン)←船会社は船上での測量結果を決定数量とする。
③顧客からのもらい=USD2,370,000(= USD120/トン x 19,750トン)←顧客とも船上での測量結果を決定数量とする。

となり、元々約USD49,375(USD2.5/トン x 19,750トン)の利益を見込んでたはずが、USD625(=)の損失になってしまう。つまり、何もしなかった方が良かったってこと。何の為の商売・・😣

なぜこんなことが起こったのか?

結論、サプライヤー・S社と締結した契約書の文言が甘かったのだ。。

前述の通り、積数量の決定方法は、普通は、積んだ後に船上で行なう測量(=Draft Surveyと呼ぶ)が一般的である。他方、S社やその地域のサプライヤーは、工場積港に向かう前に、商品を積んだトラックを、工場で測量し、その合計値を積数量としていたことが分かった。もちろん、第三者機関立ち会いの下の測量だったのだが。。

🐱(なにそれ・・・欧州の商習慣・・?でも、S社との契約書でも”Draft Survey”としっかり規定してるはず。。だから、サプライヤーからの報告数量は使わないと主張出来るはずだ!)

そこで、深夜3時頃まで、対サプライヤーの契約書を隅々まで確認したが、「第三者機関が測量する」とは書いてあったが、“Draft Survey”(=船上での測量)2文字がなかったのだ😞

当然、サプライヤーとしては大きい数量(=20,250トン)が販売数量だと主張する。こちらは、Draft Surveyの2文字が無い契約書で、19,750トンが正しい数量だと精一杯主張するも、客観的にそれを正当化する術が無い。そしてもちろん、C社には19,750トンでしか売れないわけだ。。

困った🐱💦

3. 「で?なぜウチが損する必要がある?」

これでサプライヤーとは大揉め。お互いが、

S社🏢「トラックの測量が最終数量だ!」
当社🐱「いや、Draft Surveyが一般的だろ!」

という主張で議論は並行線。

裁判に持ち込んでも勝てるかどうか分からないし、それよりも労力が取られる。。最悪、約5万ドルの利益を失い損失を抱える覚悟をした。。

そんな時、やはり頼りになるのは先輩だ👱‍♂️✨ウチの会社(部署?それとも課??)特有の文化か、例え新人であっても、本当にヤバい状況になるまでは、徹底的に考えさせ自力で解決させるまで追い込むという方針なのだ。

私が損失を受け入れる回答をしようとした瞬間、華麗にカットインだ✂️✨

👱‍♂️「ドチ、何でウチが損する必要がある?」
🐱Draft Surveyの文言が無く、契約上、確定船積数量が19,750トンと証明出来ないからです・・」
👱‍♂️「その契約書はどこの国の法律に従うと決めてんの?S社の国?」
🐱「・・いえ、公平性を保ち第三国のシンガポール🇸🇬にしてます」
👱‍♂️「もう積み込みは終わってるんだよな?」
🐱「・・はい(なぜそんなこと聞くのだろう・・)。」
👱‍♂️「もう1回聞くぞ?なぜウチが損する必要がある?」

最初は理解出来なかったのだが、、要するに先輩のアドバイスは以下の通りだった。

  • S社-当社間の契約条件では、最終数量を19,750トンと決めることが出来ない。
  • 観点を変えると、S社としても、20,250トンと当社に押し付けることが出来ない。しかも、契約書はS社に有利なE国法を採用というわけでもないから、結局、法律では決まらない。
  • その場合は、両者間の交渉で決めることとなる。
  • S社により積み込みが完了(=商品の所有権が当社に移転済)し、船が出港した現状、交渉する上で有利なのはどっち?

それが先輩のメッセージだった。無言の私に先輩は言った。

👱‍♂️「分かんない?アホかお前、S社に金払わなければいいだけじゃん」

なるほど、既に所有権を得た今、モノを押さえたウチが交渉上有利ということか。

超真っ直ぐで何も考えていない私は、🐱📩19,750トン分の代金だけ払いますね」とメールしてしまった。。見かねた先輩が💢怒りのカットイン💢だ。

👱‍♂️「今のメールすぐ取り消せ。そんな言い方があるか?今回の件は100%S社に落ち度があるのか?S社の地域の商習慣(検量方法)を事前に確認しなかったウチにも責任はあるんじゃないか?」
🐱「・・はい、そうです」
👱‍♂️「であれば、間をとって20,000トン分の代金を払う方向で落ち着く様、現地支店のスタッフにこの交渉方針を伝えろ。そうすれば、想定利益からUSD25,000減るが損失は出さないだろ?」
🐱「・・・」
👱‍♂️「そんな相手の気持ちを考えない強引な交渉した後、S社は今後ウチと取引したいと思うか?S社って新規なんだろ?『もう絶対売らねぇ!』ってなるだろ?」
🐱「・・・はい。。」
👱‍♂️「とにかく、今回は両者に確認不足の点があったとして、なんとか20,000トン分の支払いで事態を収めろ。相手の気持ちを考え、めちゃくちゃ慎重にメールの文言を考えろ。出来ないなら担当から外れろ。」

・・何も言い返せなかった。

4. 長く取引する為の心構え🤝

結局、先輩のアドバイスの通りに案件をClose出来た。利益こそ減ったが損失は回避出来た。

この新規取引は約10年近く前の話。だけど、その後、私が異動してからも2回目の取引を決め、なんと今でも現行のチーム員がS社との商売関係を継続してくれている

現地支店のスタッフは、この一件以来S社と本当に密にコミュニケーションを重ねている様であり、未だに、あの時の「衝突」でお互い襟を開いて話した経験から本音で付き合える様になったんだ、と言ってくれる。

  • 新規取引先との商売は、開始前に現場視察等を行ない、自身の目で何が起きているか/何が起きそうかをしっかり確認すべし!
  • 契約書の文言を作る時は、想像力を存分に働かせ、潜在するリスクを排除することを徹底すべく考え抜くべし!

以上2点の教訓に加え、

  • 中長期的に、互いに大切なパートナーと思える様な取引関係を構築する為には、目先の利益を優先する強気の交渉ではなく、時として譲歩することも大切

という大切なことを学んだ✨

・・・何か綺麗な締めになったけど、、本当に胃が痛い経験だったわ〜🐱😣💦

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いかがでしたでしょうか❓結構リアルに物流業務の厳しさをお伝え出来たかなって思います😏ちょっと長かったけどね💦

ご質問等あれば、本ブログのお問い合わせフォーム、Peing匿名質問箱、TwitterのDM等でお知らせ頂けるとありがたいです‼️ (難しい様でしたら、「分かりにくい!!」ってご意見頂けると本当に助かるんです🙇‍♂️💦)

最後に。

クリスマスツリーが我が家にやってきた🎄🐱✨あとはサンタの衣装・・・🎅💦

P.S.

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