【総合商社】国別ビジネスシリーズ③シンガポール編(2)業務編

仕事内容 海外駐在

どうも、ドチです🐱

総合商社が各国で手がけるビジネスを数回にわたって説明しています。

第三回は「シンガポール編🇸🇬で、本日は②業務編となります。

ご参考(①概論編)⬇️

前回記事では、各商社の直近のシンガポールでの取組みを解説させて頂いた訳ですが、今回は実際に業務に携わるシンガポール駐在商社マンのリアルな一日をご紹介します。

それでは見ていきましょう🚀(本記事、臨場感を出した一方で、、ちょっと長くなっちゃいました💦ご容赦🙇‍♂️)

シンガポール駐在員商社マンの一日🦁🧜‍♂️

Aさん(👱‍♂️)は、B物産(以下、B社)シンガポール支店化学品第二課に勤務する9年目の総合職社員。シンガポールに赴任したのは4年前。駐在は同期の中でも早い方であったし、他でもないシンガポール駐在だったので、内示を聞いた後は超嬉しかったのを覚えている✨事実、街は綺麗で食べ物も美味しく、世界的に有名なアーティストのコンサートや、最先端のビジネス系イベントも開催される。海外旅行する際も、チャンギ国際空港から直行便で行けない国はほとんど無いし旅行は不自由しない。素晴らしい場所で働く機会を得たなぁ着任当初は思っていたものだ。

ただ、、半年も経てば、国土が狭いから行ってない場所もほとんどなくなるし、業務の方も、シンガポール始め海外の支店は基本、「本社の戦略の通りに動く」的な感じであり、地球儀を見ながらその商品のマーケットをどう動かしていくか、という様な司令塔的立場ではなく、尖兵的な働き方が要求される傾向がある。なので、ちょっと刺激が足りなくなってきてるという気持ちがあるのが否めない(まあそれでもシンガポール駐在してる立場で、本社や他国の駐在員にこんなこと言ったら殺されちゃう・・😱)。それに、4年も経てばどこで働いてても刺激はなくなってくるか。。

実は、以前から、上司よりは「半年以内に帰国することになるであろう👨‍🦰」と言われており、残り少ない期間で最後に一旗揚げてやろうと燃えている🔥

以下は、そんなシンガポールオフィスで働く駐在員Aさんの1日です。

09月XX日(火)
08:30-09:30
出社。今日は忙しい🔥メタノール商売でインドネシア🇮🇩の顧客に出した、本社から預かったオファーの有効期限がシンガポール時間の13:00であり、それまでに顧客から回答を受け、もう一交渉することが予想される。それに加えて、午後は硫酸商売の国内販売先との交渉がある(*1)💦

(*1)基本、海外支店で働く駐在員は、本社では1つの課が扱う商品を、複数掛け持ちながら、「浅く広く」担当することになる。ありがちなのは、知識も深く思い入れも強い、自身の出身部署の商品に労力&時間をかけ、その他の部署から「出来ない人🤷‍♂️」と思われがちになったりする。

09:30-10:30
👨‍🦰「A!ちょっと今いいか?」

いきなり上司(👨‍🦰)から呼び出され会議室へ。。まさか。。

👱‍♂️「どんな話でしたでしょうか?」

👨‍🦰「まだ具体的な時期は決まってないが、来月末頃に本社へ帰任だ」

👱‍♂️(ついに来たか。。来月ってすぐだな)(*2)

👨‍🦰「お前の帰任先はメタノール事業部で、ここに来る後任は本社にいる8年目のD君(👨‍🦲)って子なんだが、知ってるかい?」

(*2)テレビや漫画で「来週からA国に行ってもらうから!」とか、そういう内示から転勤まで超短いスパンの例え話があるが、基本、そんなケースは起こり得ない。前任者/後任者との引継期間等もあるし、渡航先によっては破傷風やA/B型肝炎等の予防接種も必要となる。せいぜい短くても内示を受けてから1ヶ月後とかそんなレベルである。

なんと、、希望通りメタノール事業部に帰任できることは嬉しいが、、後任がDとは。。知ってる後輩だし、良い奴ではあるんだけど・・(←後任が、いわゆる「仕事が出来ない奴」と噂される人間だとショック😱というのは「転勤あるある」だ)

10:30-12:00
気持ちを切り替えて仕事だ❗️これから2週間後にDが引継出張にやってくるし、それまで引継書も作成しなければならない📑ますます忙しくなるな💦そんなことを考えながら、午後の硫酸商売の交渉の準備をしていた頃に本社より📞が。

👨‍🦲「A先輩!!今日そっちでも異動の情報解禁なんすよね!?お世話になります✨」

このクソ忙しい時に浮き足立った声で💦何ともDらしい・・・。まあでも初めての駐在先がシンガポールってなればそうなるわな。

12:00-13:00
残念ながら昼食はデスクで🥪。メタノール顧客からのカウンタービッド(*3)を待ちつつ、引継書の構成と、再来週からの引継期間中のスケジュールを考える🗓オフィスの外には、世界有数の国際港であるシンガポール港に寄港する無数の貨物船が今日も見える。この景色ともあと1.5ヶ月でおさらばと考えると寂しい。
オフィスからマリーナ・ベイを望む景色
と、そこへ顧客からの返信が📩

“=Counter bid=
Price : USD203.5/MT for CFR Surabaya, Indonesia
Quantity : 15,000MT +/- 5% at Seller’s option
Other conditions : The same as yours
=End of the counter bid”

価格がこちらのオファーより1.5ドル/トン安い値段を提示してきた。1.5ドル/トンのギャップなら決められそうだな。数量を少し減らしてきたことはさほど問題なしだろう。取り急ぎ本社に連絡📞

(*3)オファーの対義語。要は、買手が売手に「この条件であれば買う」ということを保証する申し出のこと

13:30-14:30
硫酸商売の取引先の事務所までGrab(*4)を利用し移動🚗。移動中、携帯で本社の担当である後輩(👦)とやりとり。

👱‍♂️「1.5ドル/トン、何とかdiscount出来ない?」

👦「1ドル/トンだったらいけそうですけど、、シンガポール支店のコミッション0.5ドル/トン減らせません(*5)?そしたら契約決まりますけど・・・?」

👱‍♂️(コイツ、、結構言うやん。)「0.5ドル/トン下げたらこっちは0.2ドル/トンしか利益出ないやん。そんな利益でウチの経費カバー出来るか、無理!」

👦(このAさん、、そういや来月から俺の上に着くんだよな・・)「わかりました。。ちょっと運賃下げられないか、船会社と交渉してみます」

(*4)シンガポール発のUberみたいなサービス
(*5)シンガポール支店は本社からコミッションをもらう形態をとっている。顧客が203.5ドルならB社から買うと言っており、本社は元々のオファー205ドルから1ドルならdiscount可能と言っている。あと0.5ドルはシンガポール支店の利益を削れば良いでしょ?というのが後輩の発言の趣旨。尚、化学品関連部署の若手は生意気な傾向あり(←個人の感想です😏💦)

14:30-15:30
取引先の事務所着🚗。早速、商談に入る。取引先との面談中に、別の交渉が並行して走っている、というのは良くある話だが、今回のメタノールのインドネシア向け商売は、帰任する部署の大切な新規顧客となるから決めておきたい(←商社マンはいつだってしたたかだ)💦と、そこで本社から📲「トイレに・・👱‍♂️💦」と中座。

👦「運賃下げられましたが、0.25ドル/トンだけでした・・こちらも1ドル利益削りますので、そちらのコミッションも0.25ドル削って、203.5ドル/トンで再度オファー出して決めてもらえません?」

👱‍♂️「・・・分かった」

そう言って、トイレで超速で再オファーを打つ。価格は204ドル/トンだ。

15:30-16:30
硫酸の販売先と交渉継続中。やはり気になるのはメタノールの方。と、そこへ🇮🇩のメタノール顧客の担当者、Yogiさん(👳‍♂️)から着信📲「すみません、、ちょっとまたトイレに👱‍♂️💦」

👳‍♂️「204か・・・あと0.5ドル何とかならんか?」

👱‍♂️「めちゃくちゃ頑張って1ドル下げた。何とか204ドル/トンでYogiさんと取引を始めたい🔥」

👳‍♂️「204じゃあ、、ボスを説得出来ない」

👱‍♂️「Yogiさん、実は来月日本に帰国することになった。あなたには本当に世話になった。出来ればあなたと商売を始めたかった・・・」

👳‍♂️「・・A、少し待ってろ(ガチャ)」

👱‍♂️(😏✨)

16:30-17:30
硫酸の販売先との交渉が無事まとまった頃に携帯にテキストが📲。

👳‍♂️”Mr. A, your offer is accepted!!”

B社のメタノール商売史上、インドネシア向け記念すべき初成約だ✨しかも、シンガポール店のコミッションが0.25ドル/トン増えた😄💰。何度も🇮🇩に足を運び、👳‍♂️と良好な関係を築けてきた👱‍♂️には勝算があったのだ✨

17:30-18:30
2件とも無事に決めることが出来、ホッとしながらオフィスに戻る🚗。車中で上司に報告📲。複数の商品を動かすこの忙しい生活ももうすぐ終わると考えると少し寂しくなる。。

18:30-19:30
支店に戻り、本社への成約報告メールを送信📩帰任先の部署だから、いつもより丁寧にと少し意識してしまう😏💦

19:30-21:30
妻(👱‍♀️)と待ち合わせのレストラン着🍽。シンガポール駐妻生活を超楽しんでいた彼女に悲しいお知らせを告げる。。もうラッフルズホテル🏨での優雅なアフタヌーンティーは出来ない・・☕️😢
21:30-23:30
帰宅。引継書を作成し始める✏️少しして就寝。今日も疲れた〜😪

ーーーーーー

いかがでしたでしょうか❓海外支店の駐在員という立場は少々複雑で、同じ会社なのに、自分の所属の利益を最大化する為に、時として本社と交渉したりする必要があります。また、化学品の様に、いくつもの商品を1つの課で扱うのも駐在員ならではの仕事ですね✨

何か質問がある方はお問い合わせフォームor Twitter🐦よりご連絡を❗️

最後に。

個人的には海外支店勤務より事業会社への出向の方がエキサイティングだと思う‼️🐱✨